国際港湾協会(IAPH) は、2018年、港のSDGs貢献のリーダーシップをとることを目的として「世界港持続可能性プログラム」(WPSP, World Port Sustainability Program)を立ち上げ活動している。主としてWPSP Report 2020を参照して、港のSDGsに向けたプロジェクトを分類整理する方法(5テーマ)を提示し、港のSDGsに取り組む場合の参考としたい。
Ⅰ.レジリエントなインフラ
港と港関連のインフラは、海上輸送と陸側ロジスティクスの(物的とデジタルの)要求を充足し、かつ気候・気象条件の変化にレジリエントであり、そして地域のコミュニティ、自然、伝統と調和して発展することを目指す。
トピックス:港の計画・設計、公民のパートナーシップ、財政、デジタル化と自動化、気候レジリエンス、自然と共生、生態システムの管理
主な分野:
① 港運営のITによる最適化(ポートコミュニティシステム(PCS)を含む)
② サプライチェインのITによる最適化
③ 気候変動効果に呼応したインフラとエコシステム管理の応用
④ 市場の需要とステークホールダーの利益を考慮した港の計画と整備
スマートポート(Smart Port,賢い港の意味)は、ⅠとⅡ(レジリエントなインフラ、気候とエネルギー)にかかわるプロジェクトである。
Ⅱ.気候とエネルギー
港は、地球温暖化を2℃以下に維持するというパリ気候目標を支持する。国際港湾協会が2008年に始めた世界港気候イニシアティブ(World Port Climate Initiative)の結果に基づいて、海運、港、陸側作業によるCO2排出を減少するために手段を開発することに、港関係者は協力する。その上、エネルギーの転換、大気質の改善、循環経済の発展のためにイニシアティブをとる。
トピックス:エネルギー効率、循環経済、バイオ基盤経済、再生エネルギー、CO2とインフラ、クリーン船の奨励、代替輸送燃料の利用
主な分野:
① 船舶からの温暖化ガス排出を減少させるイニシアティブ
② 港管理の効率性上昇
③ クリーンで再生可能なエネルギーの製造、実験、実施のプロジェクト
④ 炭素補足と気候変動適応に向けたエコシステム管理
⑤ 循環経済
Ⅲ.コミュニティ働きかけ、および港と都市の対話
背後地のボトルネック、訓練と教育、情報技術(IT)、マーケティングと振興、および技術革新と国際化など、港地域内外の集団的問題を解決するために、港関係者は相乗効果(シナジー)を発揮する。それと同時に、港湾都市の魅力とレジリエンスに貢献するような革新的な交互サービスを提供するために、港関係者は都市側のステークホールダーと対話を続ける。
トピックス:ステークホールダー管理、持続可能性の報告、コミュニティ働きかけ、都市と港の関係、雇用、教育、空間計画、港の自然、港文化、港湾活動の外部効果
主な分野:
① 環境外部性(大気、水質、騒音、廃棄物など)に着目したイニシアティブ
② 社会的ニーズや要求(余暇、緑地、教育、文化、伝統、地域経済)に着目したイニシアティブ
③ エコシステムと生態的多様性の保護、および生態回復プロジェクト
④ 持続可能な港の管理、計画と開発
Ⅳ. 安全とセキュリティ
港内の船と貨物荷役の安全とセキュリティの確保に関連して、規制的な義務と責任が存在し、それと共にこれらの分野での法と規制の執行が存在する。世界的なテロリズムとデジタル化の進行によって、セキュリティ問題は全く新しい次元に突入した。
トピックス:サイバーセキュリティ、重要なインフラの防衛、船舶保安システム(ISPS)、海運の安全、労働の安全、責任ある治療
主な分野:
① 健康・安全の緊急時準備(Preparedness)と対応
② 港地域のセキュリティ
③ サイバーセキュリティ
Ⅴ. 統治と倫理
港当局(ポートオーソリティ)の所有形態に関わらず、良い組織統治の原理(グッドガバナンス)が港当局に導入されてきている。その上、全ての港関係者は高いレベルの倫理と透明性を保持すべきとされている。
トピックス:透明性、統合、同権と機会、公正な貿易、賄賂撲滅、責任あるサプライチェイン
主な分野:
① 会社の社会的責任(CSR)イニシアティブ
② 持続可能性の政策、計画、報告
③ イノベーションの進捗
④ ジェンダー平等のイニシアティブ
なお、5つのテーマとSDGsの目標17つの関連を図示すると、以下の通りである(目標17は該当しない)。