弊社顧問であり長岡技術科学大学名誉教授の松本昌二の「シナリオプラニングにより2030年国際コンテナ輸送と日本のハブ港を考える」をご紹介します。
わが国は、既に右肩上がりの経済成長が終焉し20年以上が過ぎようとしています。いまや世界の経済は米国と中国の2極の歯車に牽引される状況へ変化しつつ、今般の新型コロナ感染症の蔓延によるグローバル経済の停滞という未曾有の事態が現出しています。
成長や発展といった分かり易い一軸のベクトルを見据えるだけでは、将来展望を描き難くなった現在において、我が国の港湾の将来像を見通すことも同様の困難を伴います。状況の変化は、将来像を捉える際の方法論そのものに変革を求めています。分かり易い言葉で言うなら、「成長を見通して備える」という考え方から、「不確実な将来状況を多面的に想像して備える」に変えていく必要があるということです。
AIに象徴される「もの」づくりから「こと」づくりへの経済活動の質的転換への対応、記憶に新しい東日本大震災等の巨大地震や頻発する豪雨災害等への備え、SDGsに代表される多価値で多様な文化の醸成に呼応した経済活動の影響、どれ一つとっても確かな将来像を見通すことが困難な状況にあります。ましてグローバル経済下の国際サプライチェーンの中核を担っている港湾のあるべき姿を、ただ一つのストーリーで描き切ることは困難であるとともに、間違った方法であるともいえます。
松本名誉教授には、我が国の港湾の将来展望について、大胆な試論を展開していただきました。シナリオプランニングという、ある種-頭の体操的な将来像を描くことによって、我が国の港湾の将来のあり方について、どのような考えや準備が必要になるのか、示唆に富む試論をご一読いただけると幸甚です。
令和3年7月 株式会社シオ政策経営研究所 藤木 隆二